SIerがオワコンならユーザー企業はいつ社内システムの内製化に踏み切るべきか?・・今でしょ!

クラウド時代の到来によって、IT業界でにわかに盛り上がっているのがシステム開発会社(SIer)の行く末。
ここ最近だけでも、これだけの記事を見かけました。

受託開発は本当にオワコンか? SI業界の未来を前向きに考える - @IT自分戦略研究所

クラウドはSIを衰退産業に追込むのか – ベテランIT営業が教える「正しいITの使い方、営業の使い方」 – ZDNet Japan

「SIerでのキャリアパスを考える」というイベントに登壇しました – GoTheDistance

お、多いですね。。
中でも、実際にSIerをされているサイオスさんの記者発表を扱った記事では、栗原さんがこのように仰ってます。

Weekly Memo:中堅クラウドサービスプロバイダーの決意 – ITmedia エンタープライズ
このようにクラウドサービスが広がっていくと、これまで多くのITベンダーが生業としてきたシステムインテグレーション(SI)はどうなっていくのか。栗原氏は、「SI市場は終えんを迎えることになる」との見解を示した。

一方この問題について、SIerではなくエンドユーザーに対してはこんな指摘もあります。

SI屋さんとSIと、直近の課題について。 – 急がば回れ、選ぶなら近道
SI屋が自壊することで、困るのはむしろSI屋ではなく、適切なSIが提供されないことにより、あたかもメンテ不能な原発のような、システムを抱えるエンドユーザーさんになります。

怖いですね。。

では、システムのブラックボックス化を防ぐために、ユーザー企業はどうすればいいのか?

一番簡単な方法は「自分たちで、ある程度のシステムは作れるようになろう!」ということですよね。しかし、今まではそれが難しかった。

システムを開発するということがそもそも敷居が高い。
まず、プログラミング知識の取得という壁が立ちはだかるわけです。もちろん、システムが完成したとしてもそれだけでは動かない。ハードウェアのセットアップと・・・保守作業も馬鹿にならない。自社で手を出そうというのは無謀な選択肢だったわけです。

しかし時は流れて今や21世紀。
そこはクラウド時代。

ちょっとしたシステムなら自社でささっと作れてしまうサービスが出てきているわけです。

例えば、サイボウズのkintone
ドラッグ&ドロップで簡単な業務アプリが作れちゃいます。

「簡単な」という点に対して、ちょっと例を挙げます。
先週見かけた記事でこんな記述がありました。

ASCII.jp:サイオスが生々しく語る「クラウドがもたらすSIの終焉」
これに対し、クラウドであれば、汎用オフィスアプリは数時間でできてしまうという。栗原氏は弁当の注文システムを引き合いに、「昔ノーツで1週間、1人月かかっていたこのようなシステムは、アンケート作成ツールのGoogle FormsやGoogle Docsを使えば、数時間でできる。時間がかかるのは、むしろ背景のイラストだ」と説明。

弁当の発注システムに数時間もかかるんですね・・
というか、弁当発注システムを外注してたんですね。。昔は。。

では、サイボウズのkintoneならどれくらいでできてしまうのか?
栗原さんが想定されているシステムとはだいぶ違うかもしれませんが、とりあえずちゃちゃっと作ってみました。
それがこちらの動画です。

#途中、カーソルが行き来して迷っていますが^^;;;;

こんな感じで7分ちょっとで、さくっと出来ちゃいます。

サイボウズのクラウドプラットフォーム「cybozu.com」上に構築されるので、ユーザー管理やモバイルデバイス対応、セキュリティ対策、バックアップ、多言語対応などは気にする必要がありません。ラクチンですね。
不要になったら解約すればOKです。スクラップ&スクラップ。

ちなみにkintoneはAPIも用意されているので、他の社内システムと連携させるなんていうことも可能です。

ということで、「いやー、うちの社員が出来るかな?」と思っていらっしゃる方に一言、東進ハイスクール出身の私がCMにインスパイアされてお伝えすると、

じゃ、いつやるのか?・・・・

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今でしょっ!!

#ちょっとネタが古かったですね。。

iPadは本当に「イノベーションのジレンマ」に陥っているのか?(イノベーションの定義について)

今日はこんな記事が目にとまりました。

典型的な「イノベーションのジレンマ」に陥るアップル(広瀬隆雄) – BLOGOS(ブロゴス)

この記事の中で広瀬さんはこう書かれています。

新しいiPadではピクセル数が増えただとか、クアッド・コアがどうのこうのとか、そういう事ばかりがプレゼンテーションで説明されていました。「より速く、より多機能で、より完璧な、、、」これらの訴求点は完全に守りに入っている企業が強調する安全な発想であり、(既存秩序をぶっ壊してやろう!)という危険思想とは対極にある凡庸なアプローチです。

これ、ちょっと勘違いです。

「イノベーションのジレンマ」でクリステンセン氏はイノベーションを2パターンに定義しています

・従来製品の改良により、より優れた性能を提供する「持続的イノベーション」
・従来製品とは全く違う、新しい価値を生み出す「破壊的イノベーション」※

持続的イノベーションの典型例が「ほげほげ2」「ほげほげ3」みたいなネーミングの製品ですね。

破壊的イノベーションの典型例は任天堂のWiiです。グラフィック性能はそこそこに、今までにない操作性の新しいコントローラーと多人数でプレイして手軽に楽しめるライトユーザー向けソフトの充実で、勝負を賭け成功しました。

そして「イノベーションのジレンマ」とは、ある市場カテゴリで成功した企業が「持続的イノベーション」ばかりを繰り返してしまい、機能的には劣るが新しい特色を生み出す「破壊的イノベーション」を生み出した他の企業によってリーダーシップを奪われてしまう、というお話しです。

#余談ですが、元MSの中島さんによると、サイボウズのグループウェアも破壊的イノベーションとして扱って頂けるようです。^^
Life is beautiful: 図解、イノベーションのジレンマ

で、ポイントとなるのは、「イノベーションの定義」はそのプロダクトが所属する「市場カテゴリ」にとっての意味合いで決まる、ということです。

デスクトップ、ノートブックという進化のない形状の上に、CPUの高性能化、グラフィック機能の高度化など持続的イノベーションばかりを繰り返す成熟フェーズに陥ったこれまでのPC市場カテゴリ。
それに対して、一般ユーザーにとって必要以上に高機能になったもろもろの余計なものを取り払ってかなりの低機能、その代わり利用シーンの自由度を高めるタブレット形状、タッチUIという使いやすさ、低コスト、といった新たな価値を付加したのがiPadです。

iPadは「クラウド時代のパーソナルなコンピューターってこういうものでしょ?」と破壊的イノベーション=新たな価値提案をして、新たな市場カテゴリ、すなわち「タブレット市場」を創り出したのです。

だから、iPadでPC市場を非連続に進化させたばかりのAppleに「破壊的イノベーションを!」というのはちょっと意味が通じないかと思います。

ちなみに、破壊的イノベーションは登場当初はかなり低スペックで、ハイエンドユーザーからは叩かれます。こんなおもちゃみたいなのは使えないと。でも、新たに生まれた価値によって、アーリーアダプターから評価され、そしてキャズムを超え一般層へと広がっていくのです。その過程で、低機能だったものが「持続的イノベーション」により進化を遂げ、ついには従来の市場カテゴリを追い越していくのです。

だから、現在Appleがどんどん高性能化を図っているのは「凡庸」ではなく戦略の王道でして、決してジョブズがいなくなって陳腐化したわけではありません。むしろ、期待通り着実にこの市場カテゴリにおける支配力を磐石にしていて、他社から見ると恐ろしい限りではないかと思います。

おそらく先の記事で広瀬さんは、iPadに対してもうちょっと刺激的な「持続的イノベーション」を期待されているのだと思います。。

ちなみに、次にAppleが狙っている破壊的イノベーションは「TV市場」だと思うので、こちらには私も期待しています。

※小ネタですが、破壊的イノベーションはクリステンセン氏は「disruptive innovation」と表現しており「持続的」と対比させると、どちらかというと「突発的」あるいは「非連続的」というニュアンスの方が正しいそうです。

【「イノべーションへの解 実践編」発売記念特集(1)】破壊的イノベーションとは何か?:栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmedia オルタナティブ・ブログ

“disruptive innovation”のポイントは新たな市場を創成することにあるのであって、既存の市場を破壊することにあるのではないからです。たとえば、「Wiiが既存のゲーム機市場を破壊した」と言ってしまうのはちょっと違和感があるでしょう。
ニュアンス的に言えば、”disruptive innovation”の訳語としては「非連続的イノベーション」が近いのではと思います。ポイントは、今までの性能向上カーブからいったん離れて別の性能で勝負する点にあるからです
。」